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第9話 愛のままにわがままに

3月 17th, 2012 Posted in 題名の無い連載小説

DDC(大黒島データセンター)の片隅で、三郎は一人ニヤニヤしながら、なにやら図面を書いて設計している。

毎日毎日同じ作業の繰り返しで、給料は高いが「やる気」が全くでない仕事だったが、なにやら仕事以外で楽しむための企みはじめたようだ。
三郎はDDCに軟禁状態であるため、外にはでれない(だってそれが仕事だから)。
DDC内の物置には万が一機器が故障したときの交換用として、サーバやらモニタやらルータやらIT機器が大量に保管されており、これに三郎は目をつけた。
「これを使って1個システムを作ってやるもんねー♪ だってDDCの機器って絶対壊れないもんねー♪」

三郎はパンドラプラスの基幹を支える超超ハイスペックなサーバ予備機を使って、インターネットし放題&メールし放題で会社にバレない環境を作る気だ。
(どんだけ短絡的でどんだけしょぼい企みなんだか・・・)
この時の三郎の頭は所詮エ○サイト見放題で、SNSでもやって見ず知らずの人に愚痴を聞いてもらいたい。そんな程度だったが
この環境から、世間が驚愕するトンデモナイものが生まれるなんてことは、このときの三郎は知る由も無い。

「よし・・・できた!」
半日でDDC内に独立したネットワーク環境を構築する設計書が完成した。
やる気が無いと何もしない三郎だが、やる気になれば仕事は早い。
「さてと・・・あとは実際に構築する作業をどうするかだ・・・めんどくせぇな。誰かやってくれる奴いないかな・・・」
三郎が考えるアイデアは素晴らしいのだが、それを形にする力というか技術が無い。
愛帝を作ったときもそう。イメージを伝えテキパキ指示を出して大量の人を動かすことで、三郎本人はプログラムを書いたりケーブルを引っ張ったり、配線工事をすることなく「結果」を出してきた。

完成した設計書を前に、「誰か作ってくれる人いないかなぁ」と蹲る三郎。
(自分でやりゃいいじゃん?というツッコミは三郎の脳内で何度も繰り返されているが、それでも自分でやりたくないのである)

「あ!あいつだ!!名前なんて言ったっけ?新人の・・・日本人なのに外国っぽい名前の・・・チャーシューみたいな名前だったような・・・ そうだ!チャーリーだ!!あいつエビアンのところだったよな」

DDC内に1つしかない電話(内線)を取り、さっそく蝦安のいるメールサービス事業部へと電話をかけた。

室「あーもしもし?エビアン・・・じゃなくって本部長います?」
蝦「私ですが・・・どなたですか?」
室「おー!俺俺!オレオレ詐欺じゃなくって、室井だよ。エビアン元気??」
蝦「室さん!?いやーおひさしぶりっす!・・っていうか、そこから電話して大丈夫?外部と連絡とるの禁止されてるんじゃ・・・」
室「あーそうそう。軟禁されてるからね・・・。いいのいいの用件はすぐ終わるからさ」
蝦「で、なんすか?」
室「おう!こないだ配属されたチャーリー君を半日貸して欲しいのよ」
蝦「えぇーーー。いま彼は”もういいからさ(スパム慰撫システム)”で手一杯だから無理っすよ」
室「まぁいいからさ。こないだDDCに見学しに来たときに忘れ物があるから取りに行けって言ってくれればいいのよ」
蝦「んーーーーしょうがないなぁ・・・そこまで言う室さんの頼みは断れないよなぁ」
室「おっけー!ほんじゃぁ交渉成立ってことで♪」
蝦「半日以上は無理ですからね!頼んますよ!」
室「だいじょぶだいじょぶ!こっちの件が片付いたらそのうち、彼とエビアンに飯ごちそうするよ」
蝦「遠慮なくガッツリご馳走してもらいますからね!」
室「あいよー」

受話器を置いた蝦安は頭を抱えこむように顔を伏せて、肩を震わせて必死に笑いをこらえてた。
あの一件から腐ってしまったかと思ったけど、室さん、なんにも変わってねーじゃねーか!

蝦「おーい!チャーリー!!忘れ物だってよ。今日の昼からDDCに取り行ってきてくれー」
チャ「忘れ物なんかしてませんよ?っていうかDDCまで行ってる暇ありませんけど?」
蝦「いいからいいから。行けばわかるから、詳しくは室さんから聞いてくれ」
チャ「んーいいんすかね・・・」
蝦「気分転換だと思って行って来いよ。今日は直帰でいいから、明日からまた仕事宜しく頼むぞ」
チャ「んー わかりました・・・」

このクソ忙しいときにヤボ用を頼まれて、ちょっとイラっとしながらチャーリーは席を立つ。
DDCに行けばわかると言われたが、何があるのか・・・
会社を出てタクシーを拾い運転手に「大黒島まで」と伝えると・・・
「お客さーん。冗談キツイよー。大黒島は離れ小島だよ?」と運転手から苦笑される。

あ・・・そうだった。
こないだ見学しにいったときは、右も左もわからず案内されたから、どうやってデータセンターへ入っていいか覚えてない・・・
とりあえず、絵鞆漁港でタクシーを降りて、入口を探すことにした。

ATHLETAのジャージを着た若者を発見。
漁業関係者とは思えない格好だったが、船の掃除をしているところをみると、やはり関係者なのか。
キラキラと光る汗をかいている彼を見て、チャーリーは話しかける。

これがチャーリーと害吾(がいあ)の初めての出会いだった。

チャ「あのーすいません。私、パンドラプラスの者ですが、大黒島に行きたいんですけど」
害吾「ん?見かけない顔だね。」
チャ「最近、配属されたばかりの等儘(らまま)と申します」
害吾「ん?らまま?随分変わった名前だね」
チャ「はい。みんなからはチャーリーと呼ばれてます」
害吾「へー。俺は害吾(がいあ)っていうんだ。よろしくね」
チャ「ガイアさんですか。あなたも変わった名前ですね」
害吾「親父がちょっと変なヤツでね。まぁこの名前のおかげでいろいろ得してきたさ」
チャ「そうですか・・・っていうか、すいません。大黒島に行きたいんですけど・・・」
害吾「誰に会いに行くの?」
チャ「大黒島に居る室井って人に呼ばれまして」
害吾「室井!?もしかして三郎さんのこと!?」
チャ「あ、はい。」
害吾「おぉ!やっと三郎さんに会いに行く人に出会えた!」
チャ「???」

害吾は、サンパウロで出会った室井二郎の話(ラーメン屋を貰う)を聞いてすぐに帰国していた。
二郎のラーメン屋を引き継ぐにあたって、三郎と直接会って許可を貰おうと室蘭まで来ていたのだ。
しかし、三郎が大黒島にいることを聞いたが、もちろん関係者以外は立ち入り禁止。
大黒島と室蘭を繋ぐのは船しかないため、害吾は絵鞆漁港に張り付いて三郎と接触できる機会を
待っていたのだが、いつまでたっても三郎は外にでてこない。
数日経っても出てこないので、船清掃のアルバイトをしながら三郎にあえるチャンスをひたすら待っていたのだった。

そしてやっと三郎とコンタクトが取れる人(チャーリー)に会えて、害吾はテンションが上がったわけである。
害吾「三郎さんに会ったら”二郎さんの話を伝えに来た人が絵鞆漁港にいる”と伝えてくれるかい?」
チャ「いいですけど・・・。あなたは何者なんですか?」
害吾「三郎さんのお兄さんの友達さ。これからラーメン屋をやろうと思ってるのさ」
チャ「そうですか・・・。で・・・どうやって大黒島に行けば・・・?」
害吾「あ、ゴメンゴメン。あそこに泊まってる船に乗ればすぐ連れてってくれるよ」
チャ「あ~。ありがとうございます!」
害吾「三郎さんに伝言頼むぞ!」
チャ「わかりましたよ」

なんだったんだ?あの人・・・。伝言は伝えるけど、余計な事に巻き込むのは勘弁してよ・・・
室井さんも、蝦安さんも、さっきの害吾さんも、好き勝手言いやがって、なんだんだよ。
俺はパシリかよ!?

チャーリーは、イラっとしながら大黒島行きのパンドラプラス専用船に乗り込んだ。
漁港で嬉しそうに手を振って大きな声で「たのんだぞー」と叫ぶ害吾を見てまたイラっとしていた。

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第7話 大黒島の中心で愛を叫ぶ

2月 26th, 2012 Posted in 題名の無い連載小説

「はぁ・・・なんかいいことないかなぁ・・・」

室井三郎は巨大なデータセンターの中でいつもの口癖(独り言)をブツブツ呟いている。
誰にも知られていないが、巨大なデータセンターは大黒島にある。

室蘭港の灯台として室蘭港に光をてらしていた大黒島はその機能を地球岬に譲って以来、何十年も無人島となっていたが、そこに目をつけたのがパンドラプラスの社長(山登下子)である。

「ねぇ、渡辺。室蘭の大黒島って幾らで買えるのかしら?すぐに買ってあそこウチの会社のデータセンターにするわ。室蘭って何故か天災が少ないから災害対策には一番良い場所だと思うのよ。近くの製鉄所と製鋼所と製油所と協働で巨大核シェルター級の大型施設を大黒島の地下(海中)に建設してちょうだい。そのうち他社のデータもおけるようにして、BCPビジネスで小銭(数億)を稼ぐわ」

まったく根拠の無いビジネスと思われるが、山登が「やる」と言って失敗した事は無い。山登の一声で、秘書の渡辺は迷うことなく動き出した。室蘭の企業に金をばら撒き、データセンター建設はすぐに着工。三郎が愛帝BOX構築のために走り回っていた1年半の間に、「パンドラプラス大黒島データセンター」は完成していた。

三郎が構築した愛帝BOXのパフォーマンスを250%発揮できる磐石なインフラとして、完璧なタイミングで完成したデータセンターだったが、どこぞの下請け会社が良かれと思って設置した空調システムはあまりにも素晴らしくて、データセンター内の温度は常に5℃をキープするよう設計されていた。所謂巨大な冷蔵庫という状態。サーバー等の情報機器には非常に快適だが、人間が中で作業をするには過酷な施設だった。

残すはここの管理人を誰にしようかと、秘書の渡辺が人選をしていたときに、幸か不幸か絶妙なタイミングで室井三郎の不祥事が発覚。
次期社長とも言われたパンドラプラスの若きホープ&愛帝BOXの功労者への温情処分として、室井はデータセンターの管理人に任命されたのである。


おぉ・・・さぶ(寒)っ!
ったく、パンプラ(パンドラプラス)がここまでデカくなったのは誰のお陰だよ・・・
あの頃俺がアゴで使っていた渡(ワタリ)兄弟から、アゴで使われるようになるとは・・・
はぁ・・・あの頃はよかったな・・・
蝦安(エビアン)たちは元気にやってるのかなぁ。あいつらと一緒に小便に血が混じるくらい集中していた頃は、何かにとりつかれていたくらいギラギラしていたもんな・・・

愛帝BOXの構築をしていたころのギラギラしていた眼光の鋭さはもうない。
過去の栄光を思い返し、独り言をつぶやきながら、クソ寒いデータセンターの中で毎日サーバ機器のランプの色を確認し、稼動状況と異常の有無を見て回っている。完璧すぎる施設ゆえ、異常が起きることは万に一つ無いのだが、「絶対に落ちないシステム」のエビデンス(証拠)のためだけに、三郎は毎日チェックし報告書(「異常なし」)を書くだけ。こんなにつまらない仕事は三郎にとって苦痛以外の何物でもない。

三郎がこんな労働を強いられても会社を辞めない理由は、「金」。
基本給は大幅に下げられたものの、「遠隔地手当」「寒冷地手当」「単純労働手当」「そこに居れば良い手当」「孤独に耐える手当」「上司に文句言わない手当」「休暇取れない手当」等など、各種手当を総合すると給料は手取りで80万となっている。これが、愛溢れるパンドラプラスの温情処分の実態であった。

「もう豪邸も建てちゃったし、いつでも辞めてもいいんだけどなぁ。これだけもらえるなら居てやってもいいか・・・」

こんなつまらないデータセンターの保守をやらされながらも、三郎は社長の山登に感謝している。
いつの日か山登がこのデータセンターを視察に来るとき(一生来ないかもしれないが)があれば、感謝の気持ちと「やってらんねぇっす!」という愚痴をぶつけて、ここから抜け出すチャンスをうかがっているのである。

「よーし本日も異常なし!っと・・・」
1日の仕事が終わった三郎は、いつものように暇つぶしするためのワンセグTVのスイッチを入れると人気番組「スポーツ王子は俺様だ」の再放送がやっていた。
ちょうどゴルフのコーナーでゲスト出演している石川量の横に並んでいる年増な女性を見て目を疑う。

「え?何??これ・・・社長!?」
何を思ったかパンドラプラスを渡辺に任せて、プロゴルファーに転向した山登下子が、眩しいくらいのピンクのウェア(パンドラプラスのロゴ入)を着て、石川量をコテンパンに打ちのめしていた。
山登がガッツポーズを決めてカメラに背を向けた瞬間、大きな”愛”の字がプリントされていた。

「ははは!プロゴルファーになったんだ。社長らしいや。
パンプラのロゴを付けてるってことは、退任したんじゃなくって、また何か企んでるクチだな!
ったく、いちいちカッコ良すぎるぜ!!」

三郎はサーバの影からキンキンに冷えた発泡酒を取り出し、プシュっと蓋を開けテレビ画面にいる山登に向かって乾杯した。よくよく見ると番組のスポンサーはパンドラプラスだったこともわかり、これまた三郎にはツボだった。

勤務中でありながらも(誰も人が来ないからバレることも無いわけで)発泡酒を3本空けて、気分上々の三郎の目つきに変化が・・・

「よっしゃ!俺もやるぜ!!
パンドラプラスの「愛」。俺流の”愛”をこの要塞から発信してやる!」

腐った魚みたいな三郎の目に光が灯っていた。ギラギラしていた頃の目である。
社長の映像をみて何か強烈な刺激を受け、何かいいことを考えついたようだ。

============手動米乃舞==================
きーききき・・・
忘れてた7話が書けたぞー♪ 寝る前の5分で書けるのはココまでかな。
なかなか面白くなってきたな。
きっきっき・・・
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第8話 害吾とチャーリーも現る


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地球の真裏にウルトラ(まん)がいあ!?の巻
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害吾(がいあ)がサッカーと格闘技とサンバの修行のためブラジルへ渡って四日目のこと。
サンパウロの、とある通りで出会ったのが、世界一周中の室井二郎である。
ATHLETAのジャージを羽織ってるだけの、ずいぶんとラフな風体だ。


日本へ戻ったら俺の弟に会って、本当にラーメン屋やるのかやらねーのか、ちょっと聞いてみてくれ・・・・
そして、奇遇にも害吾、あんたと同じ名前のヒーローの「ウルトラマンガイア」のその主題歌を
あんたのその素晴らしい歌声であいつに歌ってやってくれ・・。な?
あいつはガキの頃から大好きなんだ・・・あれが
「ギリギリまで~頑張ってー。ギリギリまーで~踏ん張ってー♪
どうにも、こうにも、どうにも・な・ら・な・い そんな時~ ウルトラマンが!欲しいーー♪」

俺はこれからアメリカに渡って、のんびりPGAツアーに帯同してゴルフ観戦三昧だ。
か^かか^かか^か。
あいつ・・・三郎はどうやら仕事で下手しちまって、今は下働きらしい。


御礼に俺のオレオレ商法を教えてやるよ。
話は簡単。通りすがりの人に
「俺だよ、俺。俺だってー!」と近付いて
「あん時は悪かったなー、お詫びにすぐそこのラーメン屋で美味いチャーシューメンでもおごるからよ」
って引きこんで(つまりそこは自分の店だな)、注文するのを見届けたら
「あれ・・・お前、俺の知り合いの”さとう”じゃねーな、なんだ勘違いかよ。ったく。
まぁいっか。どうせだし、ここのラーメン美味いから食ってけ。じゃあな」
と立ち去る。
でもね、これがまた文句なしに美味いから引きこまれた客は絶対に文句言わないの。ほんとに。
まぁこんな感じであっという間にチェーン店50軒とちゃんぽん専門店の
「ウェストりんがストゼリア」を広げてさ、これもまた大当たりであっという間に200店舗。
弟の三郎はあんまし「商才」なさそーだしよ、そもそもエンジニアリングなんてのはあいつにゃ向いてねーんだ。
一からラーメンの修行でもしてもらって立派なラーメン屋になってもらおうと思ってな、
で、一番の人気店だった「ラー王・麺二郎=[府中店]」を譲ろうと思ったんだけどよ・・・・
あいつ、その直後に転勤で郷里にけーっちまったからな。

粳寅害吾(うるとらがいあ)は、サッカーも格闘技もサンバも、どれ一つ身につけることなく
わずか一週間足らずの滞在でブラジルを後にすることとなった。

「まぁいっか。なんかラーメン屋も面白そうだし・・・・。」

《がいあの家族紹介》
長兄:茶餓てぃが ⇒地方競馬騎手(室蘭競馬所属)
  三郎の妻である幸子は実は無類の競馬好きで三郎に隠れてよく馬券を買っている(らしい)。
  てぃがの大ファンで回収率は300%を超える(らしい)。
次兄:墮否だいな ⇒コンサルティング。税理士で司法書士で社労士でITコーディネイタで気象予報士
  日ペンのみこちゃんでボールペン習字まで習得した資格好きの秀才。胆振管内の中小企業のため日夜奮闘中。
そして三男の害吾がいあ ⇒フリーター(まだ道が見えず・・・将来はラーメン屋?)
  豊平区立西岡レジャーセンター短期大学 放浪サバイバルマネージメント専攻

さらに父:霊応れお ⇒元プロ野球選手、今は映画脚本家。
  先だって続編が公開され好評をはくした「RAILWAYS 三丁の夕日豆腐」は彼の作品(舞台は昭和50年代の室蘭)
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チャーリー現る、の巻。
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チャーリーは室蘭の大学を卒業し、パンドラプラスの協力企業である
高砂インテリジェンスサプライ社からの派遣である。
(つまり所謂人出し仲介の会社ですな)

就職氷河期が長引き「そりゃ恐竜も絶滅するよ」とか何とか意味不明なことを実感たっぷりに一人ごちながら
親の紹介で高砂インテリジェンスサプライに入社した。
契約単価に対して「福利厚生込であんたの取り分は4割だからね」が社長の岩魚河(いわなが)の口癖である。
ある意味でオープンではある。
自分で自分の契約期間と単価が明示された見積書を自分で提出するのだ。
つまり「私ってXXXX円ですから」と値札をぶら下げてるのと同じだな。
ただ、チャーリーの単価は大卒の新人とは言え、中堅のSEクラスの単価である。
なぜなら彼は高校の頃、究極のコンパイラー「れっといっとびー(なすがまま)」を開発しているのだ。
このコンパイラーでコンパイルされた実行形式は、実行されるとCPUへ
「よーしよしよし」と働きかけ、なだめすかし、ベンチマークの4倍もの速度で実行を可能にするという
物理法則的にあってはならないことをやってのけるとんでもない代物だった。
チャーリーはそのコードを惜しげも無くオープンソースとして開放した。
みなが共有できて初めて価値がある。とは彼の持論であり、恐るべし高校生だった。

ちなみに彼は地元の進学校である室蘭グレースカイ高校ではなく
自宅近所の「のんびりぼんやり」が教育方針である雲紫高校へ進んだ。
しかしその雲紫高校も他の学校と合併してしまい霧靄高校と校名変更された。
あらあら

その後地元の工業大学へ進み、自宅から歩いても20分で通えるにも関わらず
一人暮らしがしたい!とだだをこね、大学そばの寮で暮らす。
卒業を翌春に控えた晩秋の頃、外で物音がして飛び起きて見ると
寮の玄関前に一人のサラリーマン風の男が倒れていた。
「酔っ払い・・・!?」

高砂インテリジェンスサプライからの派遣先がパンドラプラスに決まり、
簡単な入所式で施設内を案内され海岸よりのデータセンターを見学していた時だった。
巨大なロードバランサーとスイッチ機器類のラックの合間に見えたのは
確かにあの朝、寮の前で寝ていたあの酔っ払いだった。
「え・・・・?」
(そうか、あの酔っ払いはここのデータセンターの作業員だったのか)

「御無沙汰してます。警察まできてどうなることかと・・・・」
「はぁ?」とは三郎。
「いや、だからその・・・・昨年大学そばの寮の前で・・・・」
「ああ。もしかして貴方は家内に連絡してくれた警察の?」
「いや、でなくてさ・。。・」
「その寮にいた学生さんとかかい?」
「です」
「いやー、あんときは迷惑かけちゃったねー」

「いえいえ。無事で何よりでしたね。それより・・・・こちらのお仕事はここの・・・・」
「え?ああ。ああ。ははは。そうね。あの時はちょっと違うとこの所属だったんだけどさ、まぁあの後色々あってさ。
今はここで運用保守さ」

「そうでしたか。あ。。。。申し遅れました。私、チャーリー・・・いえ、等儘門努之助と言います。
ミドルネームはチャーリーですけど。
派遣で今日からパンドラプラス社でお世話になることに・・・」

「ほぉそっかい。ミドルネーム?チャーリー?かっこいいねー。ハーフかなんか?」

「いえ、よくそう言われるのですが、父は音更の出身で、母は沖縄の読谷(よみたん)の出身でして。生粋の国産です。」

「ははは、そっかい。国産はいーわ。そういうしゃれっ気は好きだわ。 
あ、私は室井ね。 で、所属はどこさ?」
「はい。メール基盤技術研究グループとか何とか・・・確か」

「ああ。そう。じゃあ蝦安のところだ。」
「エビアン?」
「ははは。蝦に安いって書いてえびあん。本名だ。気のいい男だよ。ちょっとへこみやすいけどな。まぁ俺からも言っとくから頑張って。」

「はぁ・¥・・」
見学が一通り終り、夕方懇親会が催された。
配属部署がよく贔屓にしているらしい古いお店だ。店の名前は「わらったべ」。中央町の小公園脇にある。

簡単に自己紹介をした後、一人のひょろっとした男が近づいてきた。
「ようこそ。パンドラプラスへ。あんた「れっといっとびー」作ったんだって?」
「はぁ・・・まぁ・・・・」
「いやー。たまげるね。」
「・・・」
「あー、ごめんね。俺、ここのグループ長の、まぁ正確にはメールサービス事業本部長でもあんだけどさ、の蝦安。よろしくね。」

「え・・・あー!もしかして室井さんが言ってたエビアンって・・・」
「あー。あんた室さん知ってんの?あーそっかい。何だなんだ」蝦康が満面の笑みを浮かべた。

「そう。俺、そのエビアンさね。ぐははは」と歯茎をむき出しにする。
「前の俺の上司さね。室さんは。まぁ悪いことしちゃったけど・・・・」
「悪いこと?」
「え?まぁいいよ。まぁそのうちおいおいな。ははは」
さすがにあの晩秋、イタンキへ先頭を切って突撃し、室井を一作業員に追いやってしまった張本人とは言えない。

チャーリーは思う。事業本部長がなぜ室蘭の開発センターにいるのだ?
チャーリーは思う。事業本部長というすごい肩書きの人がなんでグループ長などとスタッフの長まで兼務なのだ?
チャーリーは思う。室井ってあの酔っ払い・・・一体何者だ。こんな偉い人を呼び捨てにする作業員っていったい・・・・。

「で、チャーリーくんさ。早速だけど明日からはフィルター周りの研究開発してもらうからさ。ま頑張ってね。」
「うち(パンドラプラス)のフィロソフィーはさ、「愛」なんだわ。ね。
だからフィルターにも愛を、ってことを肝に銘じてさ。ね。」

「はぁ・・・・愛ですか」

スパム慰撫システム「もういいからさ」は、スパムフィルターにかかったメールの発信先を特定し
さらにその発信元から本人を特定し、その本人の携帯へショートメールで
「もういいからさ、もうわかったから。ね?もう止めとこうよ。」
と、優しくもやや物悲しく、まるで母親の慈愛で包み込むような通知サービスで、絶大な抑止効果を発揮する恐るべしシステムである。

チャーリー。。。こと、らまま・もんどのすけ。
等儘・チャーリー・門努之助がこのスパム慰撫システム「もういいからさ」を開発するのは、わずか3カ月後のことである。
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手動まいのぶ・・・・。
最近風邪をこじらせてしまいすっかり調子を崩している。
「まいったまいった。。。くーくくくく・・・・じゅりじゅり(鼻)」

呑みなれないインスタントコーヒーを更に呑みなれない豆乳で割って少しむせてしまう。
そして再び原稿に目を落としたその時だった。
「あ・・・・俺ってば第七話を飛ばしちゃってるじゃん!」

そう。書き上げたのは第八話である。
参った、これには参った。でもそれも5分少々のこと。
「まぁいっか。今後は『偶数回』だけでいっちゃえ。くーくくくく・・・」
なんと軽率であることか。いや、でもこんな手動の簡単さとノリがいい。そこが大好きなのだ。
って、おめーは誰だ。

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