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第8話 害吾とチャーリーも現る


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地球の真裏にウルトラ(まん)がいあ!?の巻
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害吾(がいあ)がサッカーと格闘技とサンバの修行のためブラジルへ渡って四日目のこと。
サンパウロの、とある通りで出会ったのが、世界一周中の室井二郎である。
ATHLETAのジャージを羽織ってるだけの、ずいぶんとラフな風体だ。


日本へ戻ったら俺の弟に会って、本当にラーメン屋やるのかやらねーのか、ちょっと聞いてみてくれ・・・・
そして、奇遇にも害吾、あんたと同じ名前のヒーローの「ウルトラマンガイア」のその主題歌を
あんたのその素晴らしい歌声であいつに歌ってやってくれ・・。な?
あいつはガキの頃から大好きなんだ・・・あれが
「ギリギリまで~頑張ってー。ギリギリまーで~踏ん張ってー♪
どうにも、こうにも、どうにも・な・ら・な・い そんな時~ ウルトラマンが!欲しいーー♪」

俺はこれからアメリカに渡って、のんびりPGAツアーに帯同してゴルフ観戦三昧だ。
か^かか^かか^か。
あいつ・・・三郎はどうやら仕事で下手しちまって、今は下働きらしい。


御礼に俺のオレオレ商法を教えてやるよ。
話は簡単。通りすがりの人に
「俺だよ、俺。俺だってー!」と近付いて
「あん時は悪かったなー、お詫びにすぐそこのラーメン屋で美味いチャーシューメンでもおごるからよ」
って引きこんで(つまりそこは自分の店だな)、注文するのを見届けたら
「あれ・・・お前、俺の知り合いの”さとう”じゃねーな、なんだ勘違いかよ。ったく。
まぁいっか。どうせだし、ここのラーメン美味いから食ってけ。じゃあな」
と立ち去る。
でもね、これがまた文句なしに美味いから引きこまれた客は絶対に文句言わないの。ほんとに。
まぁこんな感じであっという間にチェーン店50軒とちゃんぽん専門店の
「ウェストりんがストゼリア」を広げてさ、これもまた大当たりであっという間に200店舗。
弟の三郎はあんまし「商才」なさそーだしよ、そもそもエンジニアリングなんてのはあいつにゃ向いてねーんだ。
一からラーメンの修行でもしてもらって立派なラーメン屋になってもらおうと思ってな、
で、一番の人気店だった「ラー王・麺二郎=[府中店]」を譲ろうと思ったんだけどよ・・・・
あいつ、その直後に転勤で郷里にけーっちまったからな。

粳寅害吾(うるとらがいあ)は、サッカーも格闘技もサンバも、どれ一つ身につけることなく
わずか一週間足らずの滞在でブラジルを後にすることとなった。

「まぁいっか。なんかラーメン屋も面白そうだし・・・・。」

《がいあの家族紹介》
長兄:茶餓てぃが ⇒地方競馬騎手(室蘭競馬所属)
  三郎の妻である幸子は実は無類の競馬好きで三郎に隠れてよく馬券を買っている(らしい)。
  てぃがの大ファンで回収率は300%を超える(らしい)。
次兄:墮否だいな ⇒コンサルティング。税理士で司法書士で社労士でITコーディネイタで気象予報士
  日ペンのみこちゃんでボールペン習字まで習得した資格好きの秀才。胆振管内の中小企業のため日夜奮闘中。
そして三男の害吾がいあ ⇒フリーター(まだ道が見えず・・・将来はラーメン屋?)
  豊平区立西岡レジャーセンター短期大学 放浪サバイバルマネージメント専攻

さらに父:霊応れお ⇒元プロ野球選手、今は映画脚本家。
  先だって続編が公開され好評をはくした「RAILWAYS 三丁の夕日豆腐」は彼の作品(舞台は昭和50年代の室蘭)
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チャーリー現る、の巻。
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チャーリーは室蘭の大学を卒業し、パンドラプラスの協力企業である
高砂インテリジェンスサプライ社からの派遣である。
(つまり所謂人出し仲介の会社ですな)

就職氷河期が長引き「そりゃ恐竜も絶滅するよ」とか何とか意味不明なことを実感たっぷりに一人ごちながら
親の紹介で高砂インテリジェンスサプライに入社した。
契約単価に対して「福利厚生込であんたの取り分は4割だからね」が社長の岩魚河(いわなが)の口癖である。
ある意味でオープンではある。
自分で自分の契約期間と単価が明示された見積書を自分で提出するのだ。
つまり「私ってXXXX円ですから」と値札をぶら下げてるのと同じだな。
ただ、チャーリーの単価は大卒の新人とは言え、中堅のSEクラスの単価である。
なぜなら彼は高校の頃、究極のコンパイラー「れっといっとびー(なすがまま)」を開発しているのだ。
このコンパイラーでコンパイルされた実行形式は、実行されるとCPUへ
「よーしよしよし」と働きかけ、なだめすかし、ベンチマークの4倍もの速度で実行を可能にするという
物理法則的にあってはならないことをやってのけるとんでもない代物だった。
チャーリーはそのコードを惜しげも無くオープンソースとして開放した。
みなが共有できて初めて価値がある。とは彼の持論であり、恐るべし高校生だった。

ちなみに彼は地元の進学校である室蘭グレースカイ高校ではなく
自宅近所の「のんびりぼんやり」が教育方針である雲紫高校へ進んだ。
しかしその雲紫高校も他の学校と合併してしまい霧靄高校と校名変更された。
あらあら

その後地元の工業大学へ進み、自宅から歩いても20分で通えるにも関わらず
一人暮らしがしたい!とだだをこね、大学そばの寮で暮らす。
卒業を翌春に控えた晩秋の頃、外で物音がして飛び起きて見ると
寮の玄関前に一人のサラリーマン風の男が倒れていた。
「酔っ払い・・・!?」

高砂インテリジェンスサプライからの派遣先がパンドラプラスに決まり、
簡単な入所式で施設内を案内され海岸よりのデータセンターを見学していた時だった。
巨大なロードバランサーとスイッチ機器類のラックの合間に見えたのは
確かにあの朝、寮の前で寝ていたあの酔っ払いだった。
「え・・・・?」
(そうか、あの酔っ払いはここのデータセンターの作業員だったのか)

「御無沙汰してます。警察まできてどうなることかと・・・・」
「はぁ?」とは三郎。
「いや、だからその・・・・昨年大学そばの寮の前で・・・・」
「ああ。もしかして貴方は家内に連絡してくれた警察の?」
「いや、でなくてさ・。。・」
「その寮にいた学生さんとかかい?」
「です」
「いやー、あんときは迷惑かけちゃったねー」

「いえいえ。無事で何よりでしたね。それより・・・・こちらのお仕事はここの・・・・」
「え?ああ。ああ。ははは。そうね。あの時はちょっと違うとこの所属だったんだけどさ、まぁあの後色々あってさ。
今はここで運用保守さ」

「そうでしたか。あ。。。。申し遅れました。私、チャーリー・・・いえ、等儘門努之助と言います。
ミドルネームはチャーリーですけど。
派遣で今日からパンドラプラス社でお世話になることに・・・」

「ほぉそっかい。ミドルネーム?チャーリー?かっこいいねー。ハーフかなんか?」

「いえ、よくそう言われるのですが、父は音更の出身で、母は沖縄の読谷(よみたん)の出身でして。生粋の国産です。」

「ははは、そっかい。国産はいーわ。そういうしゃれっ気は好きだわ。 
あ、私は室井ね。 で、所属はどこさ?」
「はい。メール基盤技術研究グループとか何とか・・・確か」

「ああ。そう。じゃあ蝦安のところだ。」
「エビアン?」
「ははは。蝦に安いって書いてえびあん。本名だ。気のいい男だよ。ちょっとへこみやすいけどな。まぁ俺からも言っとくから頑張って。」

「はぁ・¥・・」
見学が一通り終り、夕方懇親会が催された。
配属部署がよく贔屓にしているらしい古いお店だ。店の名前は「わらったべ」。中央町の小公園脇にある。

簡単に自己紹介をした後、一人のひょろっとした男が近づいてきた。
「ようこそ。パンドラプラスへ。あんた「れっといっとびー」作ったんだって?」
「はぁ・・・まぁ・・・・」
「いやー。たまげるね。」
「・・・」
「あー、ごめんね。俺、ここのグループ長の、まぁ正確にはメールサービス事業本部長でもあんだけどさ、の蝦安。よろしくね。」

「え・・・あー!もしかして室井さんが言ってたエビアンって・・・」
「あー。あんた室さん知ってんの?あーそっかい。何だなんだ」蝦康が満面の笑みを浮かべた。

「そう。俺、そのエビアンさね。ぐははは」と歯茎をむき出しにする。
「前の俺の上司さね。室さんは。まぁ悪いことしちゃったけど・・・・」
「悪いこと?」
「え?まぁいいよ。まぁそのうちおいおいな。ははは」
さすがにあの晩秋、イタンキへ先頭を切って突撃し、室井を一作業員に追いやってしまった張本人とは言えない。

チャーリーは思う。事業本部長がなぜ室蘭の開発センターにいるのだ?
チャーリーは思う。事業本部長というすごい肩書きの人がなんでグループ長などとスタッフの長まで兼務なのだ?
チャーリーは思う。室井ってあの酔っ払い・・・一体何者だ。こんな偉い人を呼び捨てにする作業員っていったい・・・・。

「で、チャーリーくんさ。早速だけど明日からはフィルター周りの研究開発してもらうからさ。ま頑張ってね。」
「うち(パンドラプラス)のフィロソフィーはさ、「愛」なんだわ。ね。
だからフィルターにも愛を、ってことを肝に銘じてさ。ね。」

「はぁ・・・・愛ですか」

スパム慰撫システム「もういいからさ」は、スパムフィルターにかかったメールの発信先を特定し
さらにその発信元から本人を特定し、その本人の携帯へショートメールで
「もういいからさ、もうわかったから。ね?もう止めとこうよ。」
と、優しくもやや物悲しく、まるで母親の慈愛で包み込むような通知サービスで、絶大な抑止効果を発揮する恐るべしシステムである。

チャーリー。。。こと、らまま・もんどのすけ。
等儘・チャーリー・門努之助がこのスパム慰撫システム「もういいからさ」を開発するのは、わずか3カ月後のことである。
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手動まいのぶ・・・・。
最近風邪をこじらせてしまいすっかり調子を崩している。
「まいったまいった。。。くーくくくく・・・・じゅりじゅり(鼻)」

呑みなれないインスタントコーヒーを更に呑みなれない豆乳で割って少しむせてしまう。
そして再び原稿に目を落としたその時だった。
「あ・・・・俺ってば第七話を飛ばしちゃってるじゃん!」

そう。書き上げたのは第八話である。
参った、これには参った。でもそれも5分少々のこと。
「まぁいっか。今後は『偶数回』だけでいっちゃえ。くーくくくく・・・」
なんと軽率であることか。いや、でもこんな手動の簡単さとノリがいい。そこが大好きなのだ。
って、おめーは誰だ。

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