第十一話 【まだまだ混沌・・・】
嫌いじゃありませんよぉ~。おーっほっほっほほ。
本来のくるる風のほほ笑みは編集者からも実に不快がられる。
世間への露出が圧倒的に増えた今では、致し方なく「王騎将軍」風の話し方と笑い方に変えた。
(それはそれで不快がられてる)
手動の代名詞「むろランディングBOY」があれよあれよと2000万部を数えたのはもう2年前。
まさかあんな作品が当るとは・・・。
世の中わかりませんねぇ~。おーっほっほっほほ。
しかしながら当ったのは良かったがその後がまったく書けない。
まぁいっか、印税たっぷし入るしね。来年は映画化もされるしね。
と相変わらず煩悶は5分ともたない。
いまは九州某所でのんびりと暮している米乃舞である。
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下子が米PGAツアーへデビューし・・・LPGAじゃなく男子ツアーです・・・
わずか3戦目で衝撃的な優勝を飾ったその年、
室井三郎は青天の霹靂ともいうべき人事異動に見舞われた。
データセンター管理人。とは言えIT系業務の広い裾のから見れば十分立派で重要なポジション。
ところが、ところがであり。いまはもうそのIT系ですらない。
パンドラプラス建設工業。名の通り子会社である。
いまはそこで、まるで畑違いな設計業務から外注との折衝、現場では棟梁の機嫌取り。等等
複数の現場をかけもち何から何まで一人でとりまとめなくてはならない。
「うち(パンドラプラス)みたいな企業で建設とか言ったら普通はあれしょ?ファシリティ構築とかだべさ!!」
と憤ったところで仕方ない。
こんな人事、一体だれの・・・!?
渡兄弟はその後、超暗黒国系企業の諜報活動を行っていたことが判明。
普通なら解雇だろうが、渡辺は横浜にある関係会社の警備員として移動を命じた。
さっさと超暗黒国系企業からも見放された二人は、選択の余地なく横浜は金沢区の某所で
無愛想な警備を行っている。
本来なら三郎が室蘭でのこの二人のポストに返り咲くのが筋だったがなぜかそうはならなかった。
一時室蘭代表代理に命ぜられた同期の山本が三郎を小公園わきの「わらったべ」へ誘い出し
乾杯もそこそこに山本は「室井、次のどれかかを選んでくれ」と唐突に切り出した。
A・パンドラプラス建設工業へ出向
B・パンドラプラス特殊機械メンテナンスへ転籍
C・下子が主催する宗教法人「あいあい」(奈良県山奥)での修行信者たちの宿泊用ロッジの管理人に就職斡旋。
「さぁどれ?」せっつく山本。
言葉を失う三郎。
「どれ?って・・・・なにさ?何がどれなのさ?」
「だからどれかだよ」
「やー、したって・・・」
「したって、でなくて」
「もぉー」
「もぉーでも何でも」
「ヤダ」
「ヤか?」
「ヤダ」
「そうか、じゃあAで決まり。」
「えー(A)」
ということでこの子会社に決定した。うそぉ・・・。マジかい?
「実は渡辺さんからは『どれも選ばなかったらAでいいから』って言われてたから」
「でも辞めさせろだなんて話は一切なくて、とにかく『室井はいつか必ずこの会社の窮地を救う男になる』ってそればっか」
「じゃあ自分で伝えろよってんだよな。。。って言うかCって実質クビだべさ?」
山本は何も答えず、ただ黙々とハイボールとホッピーといいちこと男山を混ぜ混ぜしては一気に呑んでいた。
「・・・。」
終始無言の三郎。
「エビアンは大丈夫なのか?」
「蝦・・・ああ、こないだパンドラプラス総合医療研究所記念病院へ見舞いに行ったら意外と元気だった」
「歯茎は見えてたか?」
「ああ・・・はは」
この夜二人は初めて笑みをこぼした。
「俺もいまじゃ資格上では等儘の下だよ」山本が一人ごちた。
「チャーリー・・・か。まぁそれに相応しい活躍だからな。」
チャーリーは「LiKypePoPo」(VoIP)プロジェクトの大成功で一気に執行役員にまで昇りつめた。
しかしながら正規雇用の道は選ばずあくまで派遣社員の立場を貫いている。
MITからの声掛けさえ袖にふり、なぜか室蘭にとどまっている。
そしてそのチャーリーの元上司である蝦安は相変わらず室蘭界隈で飲み歩きとうとう肝臓を壊して入院したのだ。
「まぁ色々あるわな」
「ああ」
「そう言えば幸子ちゃんは元気か?」
「・・・。」
「どうした?最近会ってないのか?」
「会ってる、っていうかたまに見るくらいだわ。」
「おいおい、まさか離婚とかはねーんだろ?」
「いんやー、お崖様でそれはないわね。ただ忙し過ぎて出がけと寝る前に「寝顔」を見てるだけってことだ」
「そうか。建設はそんなに大変なのか?」
「まぁな・・・・。まさか中学レベルの数学をこの年で一から復習するとは夢にも思ってなかった」
「あちゃ・・・」
「まぁいい、今日は呑もう。久々に」
「ああ、そうしたのは山々だがそうもいかないんだわ。明日も早くから現場で打合せだしね。」
「。。。まぁ頑張れ。いまは渡辺さんの言葉を信じる他あるまい。」
「うん。」
「そう言やも妙な噂が流れてる。」
「?」
「上層もごく一部で留めてるようだが、どうやらうちは外食にも手を出すらしい。」
「外食?まさか日本シャフト・・・っじゃなくって日本(ひのもと)専務の画策とか?」
「恐らくな」
「あいたたたた」
「手始めに「ウェストりんがストゼリア」を買収するらしい」
「はぁー!?」
「いや、あくまで噂だけどな」
「それってアレだべ?世界に2500店舗だか展開してるってあのちゃんぽんの?」
「ああ、たぶんそんな感じ。意外と詳しいんだな?」
「それってつまり・・・あれだべや。うちの兄貴(二郎)がオーナーやってる店だもの。」
「あ・・・ああ、そうか。ははは。あそこはお前の兄さんが始めたんだったっけ?
ははは。そうだそうだ。そういうことだー!わーい!!」
ったく・・・一体何がどうなってやがる。自分の勤め先は俺をここまで振りまわして
挙句、二郎にいさんのちゃんぽん屋買収だ?おいおいおい・・・・。わけがわからんぞ。
「そうだ。そう言えば幸子ちゃんって、確か”蜂山”の家の人じゃなかったか?」
「ああ、そう。あの変人の元”蜂山”総理とは従兄だか何だからしいけど偉く毛嫌いしてるよ」
「先だって渡辺さんの代理で札経同協(札幌経済同盟的協議会)の会合に出たらその蜂山さんが
『シベリア鉄道を稚内まで延伸させよう!』
だなんてぶちあげてたよ。なんだありゃ?」
「なんなんだかねー。ついこないだ新幹線が通ったばっかしで。」
「いまの塩梅(あんばい)内閣も、彼の発言にはかなりピリピリしてるみたいだ。」
「だろうなー。わけわからんもんね。常識で図っちゃ誤るわね、ああいう人は。」
「けど彼が内閣当時の「「保険料と税を無駄にはしません」計画」は確かに効果があった・・・」
「うん。確かに。いまじゃこの国中、高齢者が目の色変えて働いてるもんな。」
「でもそれっていいんだか悪いんだか・・・。そうだ。新幹線と言えば下子さんの働きかけで
日本海周りの計画が強引に函館本線周りになったんだったな。」
「ああ、いまじゃ東室蘭駅は別名「パンドラプラス室蘭事業所前」だもん。ははは」
「新幹線もあの人にかかれば単なる通勤電車か。ははは。」
「ははは」「ははは」
「でも肝心の乗客は開業当初こそ数カ月待ちとかだったらしいが、今じゃ乗車率10%かそこらだって言うぞ。」
「んはははは。そりゃそうだべさ。ああいうのは作ることに一時的にお金使うことが目的で
その後のことは誰も興味ないの」
「ははは」
「ははは」
「ったく。ほんと何がなんだか。一体どうなってくんだ?北海道は?」
「北海道も、ってか日本が・・・な。」
海の向こうではまもなくマスターズが開幕する。
山登下子は世界初女性プレーヤーとしてオーガスタを周ることになる。
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