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第四話「女王、現る」

7月 23rd, 2010 Posted in 題名の無い連載小説

セミナーでの講演を終えた山登下子は自社へ戻るマセラッティの中で深く溜息をつく。
それは疲労でもある一方で充足の溜息でもある。
「ふぅ~~~」
今日も2000名近くの聴衆の心を鷲掴みにした、そんな充足感に浸っているのだ。

自らが起業しここまで成長させたパンドラプラス社、
今ではIT業界新興の筆頭と自他ともに認める企業である。
社名のパンドラプラスとはパンドラの箱とラプラスの悪魔をかけあわせたものだ。

山登下子、やまのぼりくだりこ。
やまのぼりはともかく、くだりこって….。
どうなんだろう、こんな名前って。

幼少の頃から幾度となく思ってきた、この名前の奇妙さ。
ただの一瞬だって親のこの思いつき以外の何物でもない
ふざけた名前を呪わなかった日はない。
42歳になろうとしている今でさえ、その怨念に似た気持ちに変わりはない。

下子は、所謂大手のコンサルティングファームやITベンダーなどへの勤務経験はない。
ましてやMBAなどがあるわけでもなく、唯一もっているのは日商簿記の3級だけだ。
だって、大学だって高校だって出てないもーん!
なのである。

とにかく、ここまで来た。
再び今日の講演での聴衆たちの恍惚とした表情を思い浮かべてしまう。

「ビジネスを勝ち抜くために唯一必要なもの・・・・それは愛です」
「愛なきビジネスなど不毛以外の何物でもありません」
「我がパンドラプラス社の誇る愛帝BOXは、皆さんの企業活動に必ずや愛をもたらすでしょう」
「ストラテクジックにしてタクティクス、エキセントリックにしてシュールでクールでエコロジー」
「ERPもSCMもどんとこい、ウェブも愛ならモバイルも愛、SISでTSS、LTEは素敵だな、あんたの心はクラウドふーわふわ」

「皆さんのIT投資をひたすら愛帝BOXに注ぎましょう、大いなるリターンをもたらします」
「よろしいですか、皆さんが今後構築するビジネスモデルには愛、愛が必要なのですよ!」
「ご興味のある方、どうかお帰りにでも私の近著『愛のままに我儘に、信じなくても愛あらば』を手にとってみて下さい」

「皆さんに幸多からんことを・・・」
(うぉぉぉぉー、やんややんや、わいわいがやがや×2000名くらいが恍惚)

下子はふと運転手の渡辺に声をかける。
「北海道の、北海道のあそこ何て言ったっけ?」
渡辺は正面を見つめたまま返事すらしない。
数秒後「室蘭、ムロラン、だったでしょうか」
「そお、それ、そこ。 ムロランだったわね。」
「はい、先だって下子様が
『釣りができて』『温泉とゴルフ場が近くにあって』『涼しいけどさほど雪の積もらない』
『晴れ間より霧がかっている』『工業用地のような場所』
で開発拠点を構える、とおっしゃって物色していた際に候補に挙がった、
あの北海道の町はムロランでした」

下子はスモークガラス越しに外を見やる。
視界には明治大学があった。

「今、愛帝BOXのフレーム設計の責任者の彼、あいつ何て言ったっけ?」
「・・・・」
「毎日何十本も煙草ばかり吸ってるちょっとうじうじっとした、いまいちセンスのなさそうなあの男、わからない?」
「・・・・室井、確かむろい・・・とか言ったと思いますが」

「むろい・・・そうね、そんな名前だったわ」
パンドラプラス社の喫煙所には監視用にWebカメラが取り付けられており、
下子はそのカメラ映像を移動中の車の中でもよく覘いていた。
喫煙率の高い社員を徹底して観察、それが彼女の趣味でもあり人事評価の一環でもあった。

「その室井とかって男をそのムロランの開発拠点責任者にするわ」
異動が決まれば5年は戻れない、それがパンドラプラス社の暗黙の了解だ。

「渡辺、明日にでも室井に辞令をだしておいて」
「承知しました」
運転手の渡辺が即座に答えた。
COOでありCFOでもある、下子の参謀にして運転手である渡辺の口元は
心なしか歪んで笑っているかのようにすら見えた。

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第3話

7月 22nd, 2010 Posted in 題名の無い連載小説

きーきききき・・・・

売れない作家、手動米乃舞(でどうまいのぶ)は、奇妙な笑い声をだしながら
書きかけの小説の続きを考えていた。

「さて、どうしよっか。普通の生活に満たされない室井三郎の人生・・・そのまま普通に
終わらせたって何にも面白くないもんな。 ここは1つ何か変化でもあたえてやれば、
ヨダレ垂らして飛びつきそうだな。よしそうしよう。  きーきききき・・・・」

手動の思考時間はキッチリ5分だった。
その後、手動は筆をとり、一心不乱に物語の続きを書き始めた。

┏━━━━━━━━━━ 室井三郎の1日 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

室井三郎の勤め先は、いわゆるIT企業である。
職場内はサバサバしていて、とくに会話もなく作業指示も、上司の愚痴も全てメールで
やりとりしている。三郎の口から発する言葉が、朝の「おはようございまーす」と
業務終了後の「おさきにしつれいしーます」だけ、という日も少なくない。

そんな冷めた職場にある唯一のオアシスが喫煙所。
三郎は1時間に一回、暇なときは30分に一回、必ず喫煙所にいって「ふぅ~」と
煙草の煙を吸いながら大きく深呼吸する。それくらい職場は息苦しいのだ。

今日は取引先からの連絡待ちで特にやることもなく、いつものように喫煙所にきて
「なんかいいことないかなぁ」と、つぶやく。
日々の生活の中でいいことはまったくないが、せめてもの救いが食べることだった。
美味しいものを食べるとその瞬間、三郎の心はとても満たされるのである。

「よし!今日の晩飯はラーメンにしよう!」と、好みの店を頭のなかでリストアップする。
今日の気分にあった店を絞り込み「よし!今日はこってり味噌ラーメンに決定!」
とテンションがあがったところで、携帯電話が鳴った。

長男の一郎からの電話だった。

「こんな日中に何の用だ?」三郎は嫌な予感がしながら電話を取る。
『三郎、すまない。こんな時間に・・・』一郎の声のトーンが低い。嫌な予感が一気に高まる。
三郎は最近体調があまりよくない父親に何かあったと思い、兄貴の言葉をさえぎるように
「どうした!?オヤジに何かあったのか!!!」
と声を荒げて問いただした。

・・・10分後・・・

一郎との電話を終えた三郎は、5本目の煙草に火をつけながら笑っていた。

何のことは無い。一郎からの連絡はこういうことだった。
  小さなラーメン屋を経営している次男の二郎が、ラーメンで稼いだ金で世界旅行に行くから
  二郎が帰ってくるまで、三郎に店を任せたいと言ってるのだが、やる気は無いか?
という打診だった。

二郎は自由奔放で、親の反対を押し切って高校を中退し、オレオレ詐欺のバイトで稼いだ金で
ラーメン屋をはじめて、これが大繁盛。 そう。あの関東圏で超有名な”ラーメン二郎”のことである。
二郎としてはノリで始めた商売だったので、店が繁盛すればするほど、やる気がなくなり、
ついに店を飛び出して世界旅行に出てしまったそうだ・・・

二郎が成田空港の出発ロビーで一郎に残した言葉は
「店は潰すなり引き継ぐなり好きにしていいよ。あ、三郎にくれてやってもいいわ。じゃーね!」
とのこと。 どれだけ自由人なんだろうか。

一郎の話を頭の中で反芻しながら、三郎の笑いは止まらない。
「ラーメン屋!この俺がラーメン屋になれるの??」

三郎は無類のラーメン好きだった。二郎がノリでラーメン屋を始めたときは、激しい嫉妬と
羨望の眼差しで「いいなぁ」と、自分にはできないことをサラっとやってのける兄貴を尊敬していた。
こんなに手っ取り早くラーメン屋になれるだなんて、三郎にとっては願ったり叶ったりの
朗報だった。

7本目の煙草に火をつけて、ヤニで黄色くなった天井を仰ぎ、
三郎は自分が作るラーメンをイメージしている。

いつもの「なにかいいことないかな・・・」という口癖は出なくなっていた。

┗━━━━━━━━━━ 室井三郎の1日(完) ━━━━━━━━━━━━━━━━

 

きーきききき・・・・

「しっかし、三郎ってのはホント単純な奴だな。
 ラーメン好きな奴が、ラーメン屋を始めるってベタな流れ・・・展開が速すぎたかな?」
手動は筆を止めて、しばし悩む。
「まぁ、いっか・・・」 5分経過したようだ。

「あ・・・そういや、三郎のキャラ的に今勤めてる会社辞めれるのかな?」
手動は発泡酒を口に運び、しばし悩む。
「まぁ、いっか・・・俺が書いてる話しだもん。どうにでもなるか」  5分経過したようだ。

きーきききき・・・・
不敵な笑みを浮かべ、右手に筆、左手に発泡酒を握りながら
売れない作家 手動米乃舞(でどうまいのぶ) は深い眠りついた。

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むろランディングBOY誕生(第二話)

7月 22nd, 2010 Posted in 題名の無い連載小説 Tags: ,

「おはようございまーす!」と、朝の挨拶をして、室井三郎の1日が始まった。
そこまで書いて手動は手を止めた。
「きーきききき・・・・」
意味もなくクルル曹長風に笑ってしまう。

手動。手動米乃舞。でどうまいのぶ。
世間に認識されているこの名前は嘘偽りなき本名である。
恐らく大半の読者はペンネームくらいにしか思っていないのであろう。

それにしても、でどう、でどうまいのぶって….。
どうなんだろう、こんな名前って。

幼少の頃から幾度となく思ってきた、この名前の奇妙さだが
そんな疑問もせいぜい5分かそこら考えると
「べつにいーか、誰に迷惑かけるわけじゃなし」
で終わる。
これは名前に限ったことではなく、手動にとって大抵のことは「5分」でタイムアウトするのだ。
諦めが早い。良いのか悪いのかはわからない。
とにかく5分しか悩んでいられないのだ。

それにしても手動。
しゅどう?マニュアル?
つまり手が動く、ってか?
おいおい・・・・冗談じゃないって。

物書きを生業にしてまだほんの2年。
でも手はまったく動かず筆は進まない。
実績はおろか図抜けた才能など微塵も感ぜられない手動だからこそ、がりがりがつがつと量を書くべきだろう。
手動自身、そのことはよくわかっている。
でも書けない。
「なぜ書けないのだー」と、やはり5分も考えればそこで終わってしまう。
「まぁ、いっか・・・」

他人が見れば明らかな転身ミスであろう。
以前は鉄鋼系機械メーカーに勤務していた。
でもいいのだ。とりあえず好きだし。
「もの書きやってるっす」
と言い切れるそんな自分が大好きなのだ。
そう、手動はナルシスくんなのだ。
きーきききき・・・・
と再びクルル曹長のように笑ってしまう手動。

これからは電子書籍が流行るらしい、とは知人の松玉宏松の一言だった。
一瞬心が動いた。
でもすぐに気付いた。
書籍で売れてない自分がなぜに電子書籍なら売れるのだ!と。
やっぱ紙、紙。やっぱ文芸春秋あたりにどっかーんと連載してみたいじゃん!ねぇ?
って。

そんな不純な、いやある意味で純粋すぎる自分が大好きな手動、
まぁとにかく、そんな不埒な間の抜けた思いから着想した「室井三郎シリーズ」。
今度こそ、きっかけをつかもう。自信がある。何だかわからないけど今度はいけるぞ。

主人公である三郎のキャラクターはごく自然にイメージできあがっていた。
とにかく「うじうじしたやつ」。ここだけは譲れない。(なんでだ!)
けれどその先が続かない。
続かないどころか、そもそもこの小説のタイトルすら浮かんでないではないか。
あらあら。
でもきっとまた5分も考えれば「何か浮かぶんじゃねーのー」と舐め切る手動である。

しかし、そんな彼の舐め切りから生まれた「三郎」という架空の男が
まさか、そお遠くない将来にあんな空前絶後の惨劇を自らにもたらすなどとは
もちろん知る由もない手動であった。

おっと。タイトルが閃いたぞ。
むろランディングBOY。
我が故郷、室蘭にランディング(着地・着陸)した「うじうじした」男の物語。
うん、これでいいだろう。(意味わかんねーけど)

きーきききき・・・・
再び手動は笑いを漏らした。

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